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大阪地方裁判所 平成2年(行ウ)56号 判決

原告

清水利明

原告

清水芳

右二名訴訟代理人弁護士

土井廣

被告

摂津市

右代表者市長

森川薫

右訴訟代理人弁護士

黒川勉

主文

一  原告らの主位的請求に係る訴えをいずれも却下する。

二  被告が施行する摂津都市計画事業千里丘駅前第一種市街地再開発事業に関し、平成二年六月二六日付で大阪府収用委員会が別表第1記載の各土地につきなした、原告清水利明に関する宅地の価額を二億一八六五万九八三八円とするとの裁決を二億二三四八万六六五〇円と変更する。

三  被告は原告清水利明に対し、四八二万六八一二円及びこれに対する平成四年四月二日から完済まで年五分の割合による金員を支払え。

四  第二項記載の事業に関し、平成二年六月二六日付で大阪府収用委員会が別表第1記載の各土地につきなした、原告清水芳に関する宅地の価額を二億一八六五万九八三八円とするとの裁決を二億二三四八万六六五〇円と変更する。

五  被告は原告清水芳に対し、四八二万六八一二円及びこれに対する平成四年四月二日から完済まで年五分の割合による金員を支払え。

六  原告らのその余の予備的請求をいずれも棄却する。

七  訴訟費用は原告らの負担とする。

事実及び理由

第一当事者の求めた裁判

一請求の趣旨

(主位的請求)

1 被告は、原告清水利明(以下「原告利明」という。)に対し、二億円及びこれに対する昭和六三年三月三一日から完済まで年六分の割合による金員を支払え。

2 被告は、原告清水芳(以下「原告芳」という。)に対し、二億円及びこれに対する昭和六三年三月三一日から完済まで年六分の割合による金員を支払え。

3 訴訟費用は被告の負担とする。

4 第1、2項について仮執行宣言

(予備的請求)

1 被告が施行する摂津都市計画事業千里丘駅前第一種市街地再開発事業に関し、平成二年六月二六日付で大阪府収用委員会が別表1記載の各土地につきなした、原告利明に関する宅地の価額を二億一八六五万九八三八円とするとの裁決を四億一八六五万九八三八円と変更する。

2 被告は、原告利明に対し、二億円及びこれに対する昭和六三年三月三一日から完済まで年六分の割合による金員を払え。

3 第1項記載の事業に関し、平成二年六月二六日付で大阪府収用委員会が別表第1記載の各土地につきなした、原告芳に関する宅地の価額を二億一八六五万九八三八円とするとの裁決を四億一八六五万九八三八円と変更する。

4 被告は、原告芳に対し、二億円及びこれに対する昭和六三年三月三一日から完済まで年六分の割合による金員を支払え。

5 訴訟費用は被告の負担とする。

6 第2、4項について仮執行宣言

二請求の趣旨に対する答弁

原告らの請求をいずれも棄却する。

第二事案の概要

一争いのない事実等

1  被告は、摂津都市計画事業千里丘駅前第一種市街地再開発事業(以下「本件事業」という。)を施行することとし、昭和六一年一一月二七日、事業計画を決定し、同年一二月二七日を評価基準日(第一評価基準日)として評価を行ったが、六か月以内に権利変換計画の縦覧に至らなかったため、昭和六二年七月二七日を評価基準日(第二評価基準日)として、この日における従前資産の評価を行い(都市再開発法七一条五項、八〇条一項)、権利変換計画を作成した。

2  原告らは、別表第1記載の1ないし3の土地(以下「本件各土地」という。それぞれの土地については「本件土地1」等という。)をそれぞれ持分二分の一の割合で共有していたが、原告らに対する権利変換計画は、第二評価基準日における原告らの従前資産(右共有持分)の価額をそれぞれ二億〇七九六万八三三九円と定め(別表第1参照)、権利変換期日後には、原告らそれぞれに施設建築物の一部(A棟一階一〇四号室と二階二〇二号室の持分各二分の一)及び施設建築敷地の共有持分を新資産として与えると定められ、原告らにその旨通知された(法七三条一項三号、四号、八六条)。

3  そこで、原告らは、右従前資産の価額を不服として、意見書を提出したが(法八三条二項)、昭和六三年三月一日付で、被告からこれを採択しないとの通知を受けた。

4  原告らは、昭和六三年三月二六日、大阪府収用委員会に対して価額の裁決を申請し(法八五条一項)、同収用委員会は、平成二年六月二六日付で、左記のとおりの裁決をした(以下「本件裁決」という。)。なお、右裁決に際して、同収用委員会が行った本件各土地の評価の詳細は別表第2のとおりである。

都市再開発法第七三条第一項第三号に掲げる宅地の価額は、次のとおりとする。

原告利明に係るもの

二億一八六五万九八三八円

原告芳に係るもの

二億一八六五万九八三八円

5  昭和六三年三月三〇日、権利変換期日が経過し、その後事業計画に従って工事も完了したので、被告は、原告らが取得した施設建築物の一部及び施設建築敷地の共有持分(建築施設の部分)の価額を左記のとおり確定し、平成四年三月三一日付で、原告らに右確定額を通知し、右通知は、同年四月一日原告らに到達した(法一〇三条一項)。

原告利明に関し

二億〇七四八万四四五二円

原告芳に関し

二億〇七四八万四四五一円

6  被告は、4記載の従前資産の裁決額と5記載の新資産の価額との間の差額を清算金(法一〇四条)として、左記のとおり原告らに支払い、原告らはこれを受領した。

原告利明に対し

一一一七万五三八六円

原告芳に対し

一一一七万五三八七円

7  本件は、原告らが、主位的に、法一〇四条に基づく清算金に未払部分があるとしてその支払いを求める訴訟であり、予備的に、本件裁決を不服として、法八五条三項に基づき、本件裁決に示された従前資産の価額の変更を求めるとともに、法一〇四条に基づく清算金に未払部分があるとしてその支払いを求める訴訟である。

二原告らの主張

1  大阪府収用委員会が本件裁決で定めた本件各土地の価額は不当に低額であり、本件各土地の価額は、次のとおり少なくとも原告らそれぞれについて、裁決額より二億円多い四億一八六五万九八三八円を下回らない。

(一) 本件各土地は、JR東海道線千里丘駅前東口の近くに位置し、第二評価基準日における本件各土地の更地価額は一平方メートルあたり三〇〇万円を下らない。

右事実は、不動産鑑定士辻田作成の鑑定評価書(〈書証番号略〉、以下「辻田鑑定」という。)からみて明らかである。

本件裁決の価額は、昭和六二年一月以降に始まった急激な土地価格の上昇(昭和六二年一月一日から同年八月一日まで少なくとも23.8パーセント上昇した。)が反映されておらず、また、原告らが把握した付近の取引事例に比しても低額に過ぎる。

被告が第一評価基準日において認定した本件各土地の価額に、第二評価基準日までの地価上昇率(23.8パーセント)を乗じた場合でさえ、本件裁決の価額を三〇〇〇万円余上回るので、本件裁決が誤っていることは明らかである。

(二) 本件裁決は、別表第2のとおり、本件各土地を土地利用目的別(すなわち建物棟別)に一五個の画地に細分化して評価しているが、一筆の土地が同一人の所有である場合には、同土地を一個の画地として評価すべきであり、細分化するのは誤りである。

(三) 本件裁決は、別表第2記載のとおりの借地人に借地権を認定しているが、このうち、西本勝を除く借地人は、いずれも原告らに対して賃借権を主張できない。すなわち、原告らと右借地人との間には、別表第3記載の特約条項があり、本件各土地が本件事業の適用を受ける場合には右特約に該当することとなり、右借地人らは、原告らに対して賃借権を主張できなくなると解すべきである。

(四) 仮に借地権が存在するとしても、本件裁決は、本件土地を住宅地域と商業地域に区分し、住宅地域における借地権割合を五〇パーセント、商業地域における借地権割合を六〇パーセントとしているが、(1)本件各土地はいずれも住宅地域にあるものとして評価されるべきであり、また、(2)本件各土地周辺の慣行的借地権割合は、宅地の場合、地上建物が店舗であっても五〇パーセントに過ぎないこと、(3)本件各土地上の借地権は、その設定から長期間経過していること、賃料が低額であること、権利金等一時金の授受もないことから通常より低く評価されるべきであり、以上の事情からすれば、すべての土地について、借地権割合は最大限五〇パーセントとするのが相当である。

(五) なお、鑑定人貝原寿一による鑑定の結果(以下「貝原鑑定」という。)によれば、本件各土地の二分の一の持分の価額は、二億二三四八万六六五〇円と評価されている。

しかし、貝原鑑定は、本件裁決と同様、昭和六二年一月から始まった急激な地価の上昇が考慮されていない点、画地の取り方が細分化されている点、借地権割合が過大である点等において問題があり、採用されるべきではない。

2  右のとおり本件各土地の更地価格を一平方メートル当たり金三〇〇万円、借地人が西本勝のみとして算定すれば、本件各土地の価額は、合計四六億二二六四万円となり、原告らの持分権の価額はそれぞれ二三億一一三二万円となる。

3  このように、原告らの従前資産の価額は、それぞれ四億一八六五万九八三八円を下らないから、各原告について、主位的に金四億一八六五万九八三八円と本件裁決額である二億一八六五万九八三八円との差額(清算金の未払金)である二億円及びこれに対する権利変換期日の翌日である昭和六三年三月三一日から完済まで年六分(右利率は法九一条一項の類推適用による。)の割合による遅延損害金の支払いを求め、予備的に、本件裁決の宅地の価額が二億一八六五万九八三八円とあるを、四億一八六五万九八三八円と変更し、その差額(清算金の未払金)である二億円及びこれに対する権利変換期日の翌日である昭和六三年三月三一日から完済まで年六分の割合による遅延損害金の支払いを求める。

三原告らの主張に対する認否及び被告の主張

1  原告らの主張1頭書記載の主張は争う。

本件裁決の価額は、被告が権利変換計画において示した価額を上回るが、被告はこれを争わない。本件裁決の価額は相当である。

2  同1(一)について

原告ら主張の更地価額は、辻田鑑定にその根拠を置くものであるが、辻田鑑定は、地価の急激な上昇は昭和六二年後半以降生じたことを無視した時点修正率を採用し、また同鑑定が本件各土地の評価の基準とする標準画地の位置が特定されていないなどおよそ合理性を欠く。また、原告らの援用する取引事例は、当事者の思惑や投機等の特殊要因によって価格が左右される店頭での表示価格であり、正常な価格ではない。

3  同1(二)について

一筆の土地でも使用者が異なり、利用状況が異なれば別の画地として評価されるべきことは、公共用地の取得に当たって使用される「公共用地の取得に伴う損失補償基準細則」第二、別記「土地評価事務処理要領」第一条からも明らかである。本件裁決は、「土地の利用状況からみて単一の経済目的に供されている範囲をもって一画地とすることが合理的かつ妥当である。広い敷地上に個別に借地権がついた建物が複数存在する場合、土地利用目的(建物棟)別に画地を区分することが妥当」としており、正当である。

4  同1(三)について

本件裁決が原告ら主張の借地権を認めたこと、原告ら主張の特約が存在することは認めるが、右特約は借地法二条、五条に違反する借地人に不利な特約であるから、同法一一条により無効である。したがって、別表第2記載の借地人らにはいずれも借地権が存在する。

5  同1(四)について

本件裁決の判断は取引事例を考慮し、かつ、地域性も反映されたもので妥当である。

6  同1(五)について

貝原鑑定の結果は認める。貝原鑑定は、画地の取り方において、本件裁決が、⑦、⑧号画地として別個に評価している土地を5号画地として一体として評価している点は、右土地上の二建物が自家自用と貸家という明確に利用目的が異なるものである以上、別の画地と考えるべきであって妥当ではないが、その余は妥当な評価を行っている。

貝原鑑定の結果は、本件裁決に示された価額と僅かしか異なっておらず、算定方法による誤差の範囲内というべきであり、貝原鑑定の結果を採用するとしてもなお、本件裁決の認定額の正当性は左右されない。

7  同2は争う。

第三当裁判所の判断

一主位的請求の適法性について

原告らの主位的請求は、原告らが権利変換処分以前に有していた宅地の価額と権利変換処分によって与えられた建築施設の部分の価額との間に差額があるので、右差額相当額について清算金請求権(法一〇四条)を有するところ、その一部の支払いを受けていないとして、その支払いを求める給付訴訟であるが、関係権利者が権利変換処分以前に有していた従前資産の価額は、権利変換計画において定められ(法七三条三号)、権利変換計画が関係権利者に通知されることによってその内容のとおり権利変換に関する処分が行われるのであり(法八六条)、権利変換計画において定められた従前資産の価額について不服がある者は、収用委員会に価額の裁決を申請し(法八五条一項)、右裁決によって価額が変更された場合には、裁決による価額と権利変換後に関係権利者に与えられた建築施設の部分等の価額との差額相当額について法一〇四条の清算金請求権が発生することとなる。

このように裁決による価額は、清算金の額を決定するにおいて公定力を有するものというべきであるから、清算金の額に不服がある者は、公定力を排除するために、右価額の裁決の変更を求めなければならないのであって、これを求めることなく金銭の給付のみを求める訴えは不適法というべきである。

本件においても原告らは本件裁決の変更を求めるべきであるから、主位的請求に係る訴えはいずれも不適法である。

二予備的請求について

1  借地権の存否

本件裁決が本件各土地について、別表第2の「借地権者」欄記載のとおりの借地人に借地権を認定したこと、西本勝を除く借地人と原告らの間に別表第3記載の各特約が存在することは当事者間に争いがない。

原告らは西本勝を除く借地人は右特約によって原告らに対して借地権を主張することができないと主張する。

しかし、〈書証番号略〉及び貝原鑑定の結果によれば、当該借地人ら又はその前主は、遅くとも別表第3記載の「契約書作成日」欄記載の頃(鑑定の結果によれば濱田長蔵については昭和二八年頃)に、建物所有を目的とした借地契約を締結し、遅くとも右時期以降現実に建物を所有して土地を占有し、賃料も支払ってきたのであるから、右特約のように借地人の義務違反行為以外の事項を要件として賃貸人が解約をなし得るとする特約は借地法二条等に反する借地人に不利益な特約であるというべきであり、同法一一条により無効というほかはない。

したがって、以下、本件各土地には別表第2記載のとおりの借地権者が存在したものとして検討する。

2  本件裁決の価額の当否

(一) 〈書証番号略〉によれば、大阪府収用委員会が本件裁決において価額を決定した過程は次のとおりであることが認められる。

(1) すなわち、同収用委員会は、土地の評価の単位となる土地(画地)について、単一の経済目的に供されている範囲をもって一画地とすることが合理的であるとの前提のもとに、広い敷地上に個別に借地権がついた建物が複数存在する場合には、各建物の敷地及び私道敷ごとに画地をとらえるのが相当であるとして、本件各土地を別表第2記載のとおり、一五個の画地に区分した(本件各土地の位置は別紙図面第1記載のとおりであり、同収用委員会が認定した画地区分は別紙図面第2記載のとおりである。なお、別紙図面第1の区分は原告が主張する画地区分でもある。)。

(2) そして、同収用委員会は、中央信託銀行株式会社、株式会社立地評価研究所、財団法人日本不動産研究所の三鑑定機関に対し、第二評価基準日である昭和六二年七月二七日における右一五個の画地の更地価額について鑑定を依頼した。

右三鑑定機関はいずれも、その鑑定の手法として、住宅地域、商業地域ごとに標準画地を定め、取引事例比較法、収益還元法をもとに、公示価格も参照して標準画地の価額を決定し、しかる後に、右標準画地の個別的要因と一五個の画地の個別的要因を比較して各画地の個別的な価額を算出した。そして、同収用委員会は、一五個の画地ごとに右三鑑定機関によって算出された一平方メートル当たりの単価の単純平均(但し、一〇〇〇円未満切り捨て)を算出し、これをもって、各画地の更地価額の単価とし(別表第2の「更地の単価」欄記載のとおり)、これに実測面積を乗じて一五個の画地の各更地価額を算出した(同表の「更地価額」欄記載のとおり)。

(3) 同収用委員会は、右のようにして算出された各画地の更地価額を基礎として、借地権価額につき、財団法人日本不動産研究所にその算定を依頼し、同研究所は、別表第2記載の画地上に、同表の「借地権者」欄記載の借地人が存在することを前提として、借地権価額の算出を行った。その手法は、実際支払地代をもとに差額賃料還元法を適用して求めた借地権価額と、割合方式により更地価額に借地権割合を乗じて算出した借地権価額を対比し、割合方式による価額に規範性があるとしてこれを採用した(同表の「借地権価額」欄記載のとおり。)。右研究所は、吹田市の商業地の取引事例では借地権の割合が五八パーセントから七〇パーセントであること、摂津市及び吹田市の住宅地域における取引事例では借地権の割合が四五パーセントから五九パーセントであること、大阪府内及び兵庫県内において施行された市街地再開発事業のうち、本件事業の施行地域と類似性の高い事例において採用された借地権割合が商業地は六〇パーセント、住宅地は五〇パーセントであること及び周辺の慣行的借地権割合を考慮して、本件事業において、割合方式に用いる借地権割合を商業地域において六〇パーセント、住宅地域において五〇パーセントとした。

(4) 同収用委員会は、右のようにして算出された借地権価額を(2)の過程により算出された更地価額から控除して、一五個の画地の価額を算出し(別表第2の「価額」欄記載のとおり)、その合計額の二分の一をもって、原告らのそれぞれの従前資産の価額としたものである。

(二) 一方、当裁判所が委嘱した鑑定の結果である貝原鑑定は、次のとおりの評価を行った。

(1) まず、土地の評価の単位となる画地を、別表第4の「鑑定人・認定画地区分」欄記載のとおり、同一借地人の借地権の及ぶ土地及び私道敷を単位として、一一個の画地とした。したがって、同収用委員会の採用した画地と比較すると、同収用委員会の画地番号①、②、③を1号画地と、画地番号⑦、⑧を5号画地と、画地番号⑪、⑫を8号画地としたところが相違する(貝原鑑定による画地区分は別紙図面第3記載のとおりである。)。

(2) ついで、地域的特性に着目した六個の基準標準画地を選定し、取引事例比較法、収益還元法により、比準価格、収益価格を算定し、公示価格をも参考にして、結局比準価格をもって右基準標準画地の更地価額の単価とした。

(3) 右基準標準画地と、状況類似地区に属する各画地の個別的要因(街路条件、交通・接近条件、環境条件、画地条件、行政的条件、その他)を比較して、各画地の更地価額の単価を算定し、これに実測面積を乗じて各画地の更地価額を算定した(別表第5の「更地価額」欄記載のとおり。)。

(4) 借地権価額は、まず、差額賃料還元法による収益価格と割合方式による価格を算定し、これを対比して最終的に割合方式による価格を採用し、これをもって借地権価額とした(同表の「借地権価額」欄記載のとおり。)。その際用いた借地権割合については、吹田市と摂津市における取引事例では、商業地においては、五八パーセントから六五パーセント、住宅地では五〇パーセント前後と認められること及び大阪府内及び兵庫県内で施行された市街地再開発事業のうち、施行地域の規模及び地域性が本件事業に類似している地区における借地権割合が、昭和五五年頃までに施行された地区では、商業地、住宅地とも五〇パーセントとされていたのに対して、昭和五五年以降は、商業地区と住宅地区で権利割合を取引の実態に合わせて区分していることから、本件において、商業地に属する画地の借地権割合を六〇パーセント、住宅地に属する画地の借地権割合を五〇パーセントとした。

(5) 右のようにして算出された借地権価額を(3)の過程により算出された更地価額から控除して、一一個の画地の底地価額を算出し(同表の「底地価額」欄記載のとおり。)、その合計額の二分の一をもって、原告らのそれぞれの従前資産の価額とした。

(三) これに対して、原告らは、本件裁決及び貝原鑑定とも、(1)画地の取り方が細分化し過ぎており、登記簿上の各筆ごとに一画地とすべきである、(2)更地価額が、昭和六二年一月以降の地価の急激な上昇を反映しておらず、また、原告が把握した取引事例に比して低額に過ぎる、さらに第一評価基準日における被告による価額の認定に比しても低額に過ぎる、(3)商業地とされた画地の借地権の価額が過大である、と批判する。そこで、右の諸点について、順次検討するとともに、本件裁決及び貝原鑑定の当否について検討する。

(1) 画地について

土地の正常な取引価格を評価する単位となる土地(画地)について、「公共用地の取得に伴う損失補償基準細則」(昭和三八年三月七日用地対策連絡協議会理事会決定、最近改正昭和六二年三月三〇日)第二、別記「土地評価事務処理要領」第一条は、画地は、原則として、「所有者及び使用者をそれぞれ同じくし、かつ、同一の用途又は同一の利用目的に供されている一団の土地」とすると定めており、「建設省の直轄の公共事業の施行に伴う損失補償基準の運用方針」(昭和三八年四月一三日建設省計発第一八号建設事務次官通達、最近改正昭和六二年一月八日)第一も同様に定めている。

右基準は画地の範囲を、社会的、経済的観点からみて合理的と認められる範囲に定めるものであり、それ自体妥当なものであるが、本件裁決は、右基準に従って画地を定めるに当たり、広範な土地について借地権が付いた複数の建物が存在する場合には、建物の敷地ごとに画地を定めるのが相当としたのに対して、貝原鑑定は、同一の借地人の借地ごとに画地を定めるのが相当であり、同一借地人の所有に属する複数の建物が存在しても画地は一個であると定めた(但し、複数の借地の間に存在する私道敷は別の画地とした。)。思うに借地人が、自己の借地権の及ぶ土地上に複数の建物を所有している場合であっても、右各建物が類似の種類と構造のものであれば、右土地全体の利用状況は同一と評価するべきであり、右のような場合には、建物の敷地ごとに画地を分ける必要はないものと考えられる。そして、〈書証番号略〉及び貝原鑑定の結果によれば、鑑定人の定めた1号画地は、辻源繊維工業株式会社が借地人であり、地上には連棟式共同住宅が四棟存在すること、5号画地は、脇田ヌイが借地人であり、木造二階建店舗併用住宅及び木造一階建居宅兼倉庫が存在すること、8号画地は、中川孝が借地人であり、木造平屋建住宅二棟が存在することが認められ、いずれも地上建物が類似の種類と構造であるので、これらを一個の画地として扱うのが相当であり、右画地を建物の敷地ごとに別個の画地とした本件裁決の画地の設定は相当ではない。したがって、画地の設定は、貝原鑑定の方法が妥当というべきである。

これに対して、原告らは登記簿上の一筆の土地ごとに画地の設定を行うべきであると主張し(別紙図面第1記載のとおり)、これに沿う〈書証番号略〉(辻田鑑定)を提出するが、右のような画地の設定は前記記載の各種の基準とも離れ、同一筆内の土地であっても土地の用途、利用目的による経済的価値の相違が存在する事実を無視した独自の見解であって採用することはできない。

(2) 更地価額の評価について

原告らは、本件裁決及び貝原鑑定とも昭和六二年一月より始まった地価の急激な上昇を考慮していないと批判する。

地価の上昇が土地の評価に適正に反映されているか否かは、取引事例比較法を用いて比準価格を算出する過程において、取引事例の取引の時点が評価基準日と異なる場合に土地価格の変動率を用いて時点修正を行う際に、適正な変動率が用いられているか否かによって判断されるべきであり(前記「土地評価事務処理要領」第一四条参照)、類似地域内の公示価格に時点修正を施して比較する場合も同様である。

そこで、本件裁決及び貝原鑑定が前提とした地価変動率(上昇率)を検討する。

〈書証番号略〉によれば、同収用委員会が更地価額の鑑定を依頼した三鑑定機関が採用した、昭和六二年一月一日から同年八月一までの地価上昇率は次のとおりである。

(商業地・住宅地とも)

中央信託銀行株式会社

二一パーセント

株式会社立地評価研究所

二〇パーセント

財団法人日本不動産研究所

二四パーセント

一方、貝原鑑定が採用した地価上昇率は次のとおりである。

(商業地について)

18.5パーセント

(住宅地について)

一六パーセント

他方、原告は、本件事業区域に近接した公示地(摂津市千里丘〈番地略〉ほか〔住居表示・同市千里丘〈番地略〉〕、商業地)の公示価格の変動率が、昭和六二年一月一日から同六三年一月一日まで四一パーセントであったことから(右事実は当事者間に争いがない。)、同年一月一日から同年八月一までの変動率は23.8パーセントであると主張する。

(算定式)

41÷12=3.4 3.4×7=23.8

たしかに、右公示価格の上昇率及び昭和六一年一月一日から同六二年一月一日までの右公示地の公示価格の上昇率が4.4パーセントに過ぎなかったこと(右事実は当事者間に争いがない。)から見れば、昭和六二年一月から急激な地価の上昇が始まったようにも見える。

しかし、国土利用計画法施行令第九条に定める基準地の価格は、近隣の摂津市正雀本町〈番地略〉において、昭和六一年七月一日から同六二年七月一日まで6.2パーセントの上昇率に過ぎなかったのに対して、右同日から同六三年七月一日までは六五パーセントと急激に上昇していること(右事実は当事者間に争いがない。)からすれば、地価の急激な上昇は、昭和六二年の後半から始まったのではないかと思われ、また、貝原鑑定は、当時の地価水準の動向について、大阪圏においては昭和六二年後半以降急激な地価高騰が始まり、平成元年一一月をピークとして、平成二年四月の金融機関による不動産投融資の総量規制が実施されるまで継続し、その後平成二年後半から平成三年四月頃に至って、不動産市場は急激に衰退し、平成三年四月以降地価が著しく下落したと分析している。

右のような貝原鑑定の分析と前記地価上昇率の認定は、貝原鑑定が、一連の地価の急激な上昇と下落を経た後である平成四年二月に評価を実施したものであり、地価変動の精密な事後的分析が可能であったと思われる点から十分信頼するに値し、同収用委員会が依頼した三鑑定機関による評価がいまだ地価変動の著しい昭和六三年一一月から平成元年二月にかけて行われたこと(右事実は〈書証番号略〉より認める。)と対比しても精度において勝るというべきである。

そして、貝原鑑定が行った基準標準画地の設定、取引事例比較法を中心とした右標準画地の更地価額の単価の算定及び右標準画地の単価から個々の画地の単価を右標準画地と各画地との個別的要因の格差を判定して算出した鑑定の方法及びその内容は十分合理性があり、正しいものと認められるので、更地価額の算定は貝原鑑定の結果に従いこれを認定するものとする。その結果は、各画地について別表第5の「更地価額」欄記載のとおりである。

これに対し、原告らは、原告らが把握した取引事例に比較して、右鑑定に示された更地価額が低額に過ぎると主張し、取引事例として〈書証番号略〉を提出するが、〈書証番号略〉及び貝原鑑定によれば、〈書証番号略〉に示された事例は、売買が成立していない事例であるから取引事例とはいえず、また、〈書証番号略〉に示された事例は、同一需給圏内にある類似地域における取引事例とは認められないから、これらを比較の資料として用いることは妥当ではないと解される。

また、原告らが援用する辻田鑑定は、前記(1)記載のように画地の設定が誤っているうえ、各画地の評価の基準となる標準画地(一か所)を設定するとしながら、右標準画地がいかなる地域性を持つ地域に設定されたものかが全く不明であること(前記「土地評価事務処理要領」第七条参照)、したがって、取引事例比較法を用いて右標準画地の価格を算定するにあたり用いられた補正率(標準化補正率、地域要因の格差率等)に合理性を認め難いことから、到底信頼することはできない。

さらに、原告らは、被告が第一評価基準日において認定していた本件各土地の価額にその後の地価上昇率を乗ずれば本件裁決の価額を上回る旨主張する。右の主張の趣旨は必ずしも明らかではないが、〈書証番号略〉によれば、被告が権利変換計画において本件各土地の価額を算定するにあたり採用した画地の区分方法は、利用者単位(すなわち借家人別)に土地を区分していたこと、借地権割合は、いずれの土地についても五〇パーセント前後と認定していたことが認められるのであり、これらはいずれも前記(一)記載の本件裁決の拠って立つ前提とは異なるので、被告の算定した第一評価基準日における本件各土地の価額は本件において参考とすることはできないというべきであり、原告らの右主張は失当というべきである。

(なお、本件裁決は、本件土地1の実測面積を326.32平方メートルとしてその価額を算定しているのに対し、貝原鑑定は、これを326.35平方メートルとして算定しているが、同鑑定の結果によれば、本件土地1の実測面積は326.35平方メートルであることが認められるので右算定は正当である。)

(3) 借地権価額について

前記(一)(3)及び(二)(4)記載のとおり、借地権価額について、同収用委員会が採用した算定方法と、貝原鑑定の算定方法はほぼ同じであり、ともに更地価額に借地権割合を乗じて借地権価額を算出する割合方式を採用し、その借地権割合も、各画地について同一の結論となっている。すなわち、別表第4のとおり、賃借権が存在する画地につき、住宅地(貝原鑑定の1号画地と8号画地)につき五〇パーセント、商業地(同鑑定の2、4、5、7、9、10、11号画地)について六〇パーセントの借地権割合を認めている。

これに対して、原告らは、本件各土地はすべて住宅地域にあるものというべきであるから、六〇パーセントという借地権割合は過大である旨主張する。しかし、貝原鑑定の結果によれば、本件事業の対象区域は、JR東海道線千里丘駅東口駅前に所在する地域であるが、商業環境、商圏の範囲等の商業集積度及び繁華性は、隣接都市の駅前商業地区に比して数段劣っていること、その中において、右4、5、7号画地の位置する地域は、いずれも、千里丘駅東口の前面に位置する商業地域であり、駅東口前を南北に通ずる市道千里丘一号線(幅員6.2メートル)に接面し、人の通行量、店舗の集積度、繁華性等の商業環境も高い地域であること、右2号画地は、右地域の北側の隣接街区に属し、低層の店舗併用住宅が所在し、駅東口への近接性、人の通行の流れは良好であったが、隣接する府道沢良宜東千里丘停車場線(幅員六メートル)沿いには、駐車場、一般住宅が所在していたため、店舗の連たん度、繁華性にやや劣ること、しかし、さらに北側の地域では中層店舗、事務所ビルの建替え等、高度化利用が徐々に進んでいたこと、右9、10、11号画地は、前記府道の南側に沿接し、日用品小売店舗が立ち並ぶが、接面道路の北側には、一般住宅、駐車場等が所在していたため、商況、店舗の連たん性、繁華性にやや欠けていたことがそれぞれ認められる。

右事実によれば、貝原鑑定が商業地と認めた各画地は、隣接都市の駅前商業地区に比べれば、その商業集積度において劣るものの、少なくとも近隣の居住者を対象とする局地的な商圏を有する近隣商業地域と評価することができるというべきである。

したがって、原告らの主張はその前提を欠き理由がない。

また、原告らは、本件各土地の周辺地域の慣行的借地権割合は、地上に店舗が存在する場合にも五〇パーセントである旨主張し、原告利明も本人尋問においてその旨供述するが、右供述は、〈書証番号略〉及び貝原鑑定の結果に照らして採用できない。

さらに、原告らは、本件各土地に存在する借地権は、その設定から長期間経過していること、賃料が低額であること、権利金等の一時金の授受もないこと等から通常より低く評価されるべきである、と主張する。右主張は要するに、割合方式ではなく、個別的な借地契約の事情を考慮して借地権価額を算定すべきであるとの主張と思われる。

貝原鑑定は、借地権価額を評価する過程において、個々の借地権の存続期間、支払賃料、権利金等の授受の有無等の諸条件を考慮して差額賃料還元法により個々の画地について借地権価額を試算しており、右試算価額は、割合方式により算出された借地権価額を下回っている。

しかし、差額賃料還元法は、当該宅地の正常実質賃料額から実際支払賃料額を控除した額(いわゆる借り得分)を還元して得た収益価格をもって借地権価額とする手法であるが、正常実質賃料額を算出する際に用いる一般的利回りやいわゆる借り得分を還元する際に用いる還元利回りの把握が困難であり、収益価格に大きな相違をきたす虞れがあるので、その結果は一つの有力な資料となり得るとしても、他に借地権価額の市場動向をあらわす取引事例が存在する場合や、本件のように市街地再開発事業の事例では、施行地域の規模や地域特性において類似性が認められる他の市街地再開発事業において用いられた借地権割合が明らかである場合には、これらを参考にして借地権割合を算定する割合方式によるほうが、より妥当性を有するというべきである。

そして、貝原鑑定は、前記(二)(4)記載のとおり、これら一切の事情を勘案して割合方式を採用し、前記の借地権割合を認めたものであり、その判断の過程及び結論は、〈書証番号略〉に照らしても不合理な点は見られない。したがって、借地権価額についても、貝原鑑定の結果によることとする。

その結果は、各画地について別表第5記載の「借地権価額」欄記載のとおりである。

(四) 以上のとおり、本件各土地について、その更地価額および借地権価額はともに貝原鑑定の結果が相当である。そして、その底地価額は、前者から後者を控除したものと認められるから、本件各土地の価額は、別表第5の各画地の「底地価額」欄記載のとおりと認められ、その合計は四億四六九七万三三〇〇円であって、原告らの各持分は、いずれも二億二三四八万六六五〇円と認められる。

3  したがって、原告らの予備的請求のうち、本件裁決の変更を求める部分は、各原告に関し、宅地の価額を二億二三四八万六六五〇円と変更する限度で理由がある。

なお、被告は、同収用委員会の裁決額(二億一八六五万九八三八円)と右貝原鑑定の評価額との間にはわずかの差しか存在せず、算定方式による誤差の範囲内であるから、本件裁決は違法とはいえない旨主張する。

しかし、法は、関係権利者の従前資産の価額と、再開発後に関係権利者に与えられる施設建築敷地若しくはその共有持分又は施設建築物の一部等の価額に差額があるときは、施行者はその差額に相当する金額を徴収又は交付しなればならないと定めており(法一〇四条)、右は再開発の前後を通じて、関係権利者の財産価値を等しくならしめるとの趣旨に出たものと解されるから、従前資産の価額(評価基準日における「相当の価額」、法八〇条)は、客観的に定めうる価格であり、収用委員会の裁量による増減を認めることは許されないと解するのが相当である。

したがって、前記認定のとおり、本件各土地の価額が、本件裁決により決定された価額を上回ると認められる以上、本件裁決は変更を免れない。

4(一) 右認定のとおり、原告らの従前資産の価額がそれぞれ二億二三四八万六六五〇円であるところ、前記第二の一5、6記載のとおり、原告らは、すでにそれぞれ合計二億一八六五万九八三八円相当の、建築施設の部分の取得を受け、かつ清算金の交付を受けているので、法一〇四条により、原告らが被告から交付を受けるべき清算金の残額は、それぞれ四八二万六八一二円である。

(計算式)223,486,650−218,659,838

=4,826,812

(二) 原告らは清算金残金の請求にあたり、権利変換期日の翌日である昭和六三年三月三一日から年六分の割合による遅延損害金の支払いを求めているが、法一〇四条による清算金請求権は、法一〇三条一項により、再開発事業の工事完了後、関係権利者に与えられた建築施設の一部等の価額が確定され、右価額の通知がなされることにより発生するから、右通知以前に右支払義務が遅滞に陥ることはあり得ない。そして、原告らに対して、右価額の通知がなされたのは平成四年四月一日であり(右事実は当事者間に争いがない。)、原告らは本件訴訟において、右発生の以前から被告に対して清算金の履行の請求を行っているから、被告の清算金支払義務は、同月一日に発生するとともに履行期が到来し、同月二日以降遅滞に陥ると解すべきである。

(三) また、右遅滞に陥った場合に施行者が支払うべき遅延損害金について、原告は法九一条一項の類推適用により年六分の割合による額を主張するが、法九一条一項が、権利変換期日において権利を失い、かつこれに対応する新しい権利が与えられない者に対して、評価基準日から権利変換期日までの期間について年六パーセントの割合による利息相当額を付することとした趣旨は、法が権利変換期日にすべての権利を一挙に変換することとして、土地収用の場合のような補償金の支払請求権(土地収用法四六条の二)を認めていないことに対応して、これによって権利の変換を希望しない関係権利者の利益が害されないよう、一律に年六パーセントの利息相当額を付して支払うこととしたものであるから、右規定は施行者が支払うべき金員の支払いを遅滞した場合を想定した規定ではないと解され、本件の場合にこれを類推適用することはできない。

そして、法一〇四条の清算金について、法一〇六条三項に関係権利者が清算金の支払いを遅滞した場合の延滞金について定めがあるのに、施行者が支払いを遅滞した場合については定めがないこと、法九一条一項の補償金について、収用委員会の裁決により施行者の定めた価額より多い額が相当な額であるとされた場合には、施行者においてその差額につき年14.5パーセントの割合による過怠金を支払うべき旨が明定されているのに(法九一条二項、これを準用する法九七条五項も同旨)、法一〇四条の清算金に関してはそのような規定がないことからすれば、法は、一〇四条の清算金の支払いを施行者が遅滞した場合については何ら定めをおいていないと解するのが相当である。したがって、施行者が清算金の支払いを怠った場合の遅延損害金については、一般規定である民法所定の法定利率によるほかはない。

そこで、被告は原告らに対し、それぞれ前記清算金の残金四八二万六八一二円及びこれに対する平成四年四月二日から完済まで民法所定の年五分の割合による遅延損害金を支払わなければならないこととなる。

三以上のとおり、原告らの主位的請求に係る訴えはいずれも不適法であるからこれを却下し、原告らの予備的請求は、大阪府収用委員会がなした原告らの宅地の価額をそれぞれ金二億一八六五万九八三八円とするとの裁決をそれぞれ金二億二三四八万六六五〇円と変更し、原告らに対し、それぞれ清算金四八二万六八一二円及びこれに対する平成四年四月二日から完済まで年五分の割合による遅延損害金の支払いを求める限度で理由があるからこれを認容し、その余の予備的請求はいずれも理由がないからこれを棄却することとし、訴訟費用の負担につき、行訴法七条、民訴法八九条、九二条但書、九三条を適用し、仮執行宣言の申立ては相当でないからこれを却下することとして、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官松尾政行 裁判官小野憲一 裁判官井田宏)

別表第1〜第5〈省略〉

図面第1〜第3〈省略〉

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